スポット

「マツダ映画社」北綾瀬の一角に懐かしき昭和が。

  • LINEで送る

3月下旬、編集部の太田と2人で株式会社マツダ映画社さんにお伺いしました。

マツダ映画社さんは日本で唯一、無声映画を専門に扱っている映画会社です。

お話を伺ったのは同社取締役の松田豊さん。創立者である二代目松田春翠氏のご子息です。(初代松田春翠氏は祖父)二代目松田春翠氏は、初代松田春翠氏のあとを継いで、戦後大活躍した活動弁士です。

ところでみなさん、「活動弁士」という職業を知っていますか?

活動弁士とは、無声映画を上映する際、観客の前で台詞のかわりに映画の内容を話す役割をする人です。

西洋では、無声映画は映像と音楽だけで楽しむものでしたが、日本は古くから人形浄瑠璃などの文化があったためか、観客が説明する人を求めたようです。そこで映画館の舞台に活動弁士と音楽隊を入れて、映画を上映していたのです。

トーキー映画(音の入っている映画)が登場するまで、たくさんの人気弁士さんが活躍していたそうです。
松田さん「活動弁士は、ほぼ日本独自のものといっていいんですよ」
―そうなんですね。ほぼ、というと一部外国にも弁士さんがいたということですか?
「アジアの一部の国で活動していました。ただ、日本の影響を受けて行われていたので、ほぼ日本独自のものといっていいと思います」
―当時の弁士さんは人気があったんでしょうね。
「そうですね。実は当時、多くの映画には台詞を書いた台本のようなものがなかったんです。弁士が映画を見て自分で口上を決めるんです」
―では、同じ映画でも映画館によって内容が変わってしまうとか…?
「そうなんです。そこが弁士の見せどころで、同じ映画でも面白く観せてくれる弁士が人気者になったんです」
おもしろい! 弁士の受け取り方によって映画の内容が変わってくるなんて… ということは、映画監督の意図していた内容とまったく違う話になっていることもあるのでは… と思っていると、
「でも監督さんによっては、受け取りかたが変わらないように、弁士向けに台本を書いた人もいるんです」

―現在でも活動されている弁士さんがいらっしゃるようですね。
「そうですね。全国で十数人はいると思います。でも弁士の仕事だけでやっていけるのは、父(二代目松田春翠氏)の門下生だった澤登 翠くらいだと思います」
―澤登さんは現在の第一人者の方ですね。いろいろな賞をお取りになっているようですし、たくさんのお弟子さんもいらっしゃいますよね。

弁士 澤登 翠

「ええ、澤登の弟子も活躍していますよ。今では、弁士という職業は日本の伝統文化として認知されています。澤登は海外によばれて公演を行うことも多いですね」

そして、弁士さんととも映画を盛り上げたのは映画館で生演奏をする音楽隊です。

「楽団は和洋折衷です。三味線と太鼓とバイオリンとフルートみたいな」

―えー、そうなんですか。それはおもしろいですね。

「今でもそうです。生演奏で上映会をやるときはそんな組み合わせです。メンバーも三味線を弾くギタリストとか、パーカッション奏者だけど和太鼓も叩く、みたいな感じで。ピアノが入るときもありますね」
そんな音楽聞いたことがありません。すごいですね。聞いてみたい~ マツダ映画社さん主催の上映会が定期的に行われているとのことなです。

マツダ映画社公式サイト
http://www.matsudafilm.com/

マツダ映画社さんは当初向島で設立され、移転して北綾瀬に来られたそうです。こんな雰囲気のある場所が北綾瀬にあることにちょっと感激。

インタビュー後の雑談のなかで、「映画館は今、岐路に立たされている」という話を伺いました。

映画はデジタル化が進んでいて、上映にはデジタル用の映写機が必要なのですが、それが1台約1千万円。スクリーン1つにつき1台が必要なので、シネコンのように4つも5つもスクリーンがあれば費用は4~5千万円。大手配給会社の傘下であればいいのですが、独立した映画館などが投資費用をかけても、回収するのは至難の業ですね。

さらに映写室には両方置くスペースがないので、デジタル機を導入したら、旧型の映写機は廃棄せざるを得ないそうです。ということは、デジタル化したら今までの映画は上映できず… 費用をかけて新作を上映するか、旧型の映写機で「名画座」として生きるか。映画館の経営者は選択を迫られているそうです。

私は日頃そんなことを考えたこともなかったので(最近の技術はすごいな~とか、おっこの映画おもしろそう~とか思っているくらい)、考えさせられました。どの業界でも内情を聞くといろいろあるのですね。なにがいいともいえないし…

と、そんな感じで取材を終えました。マツダ映画社 松田さんには興味深い話をたくさんお聞きすることができ、楽しい時間を過ごすことができました。ご協力いただきありがとうございました。

マツダ映画社さんは、玄関を入るとすぐ横に、貴重な古い映写機やカメラなどが展示されたウィンドーがあります。どなたでも見学可能だそうですし、古い映画のポスターの絵柄を映したポストカードなども販売されています。みなさんもお散歩の途中に、ぜひ一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。


ポストカードプレゼント 抽選で3名さま
339取材で、マツダ映画社さん製の「レトロな映画ポスターのポストカード」を購入してきました。3枚を1セットとして、抽選で3名さまにプレゼントします。ご希望の方はinfo★3-39.com(★のところを@に置き換える)でタイトルを「ポストカード希望」、本文に住所とご氏名を明記してお送りください。どのポストカードが当たるかはお楽しみ♪ 2012年5月末まで
とっても雰囲気のある素敵なハガキです。たくさんのご応募お待ちしています!


マツダ映画社
〒120-0003 東京都足立区東和3-18-4
tel:03-3605-9981  fax:03-3605-9982
http://www.matsudafilm.com/

略歴
1952年  「マツダ映画社」設立(初代代表:二代目松田春翠)
1959年  「無声映画鑑賞会」設立(初代会長:二代目松田春翠)
以降、定期的な上映会開催・機関紙『活狂』(かつきち)発行
(1970年代~  山田達雄監督・市川崑監督らの映画製作に協力)
1979年    ニュー・サイレント映画(音楽と効果音のみ収録)「地獄の蟲」を製作
1980年    ドキュメンタリー映画「阪妻~阪東妻三郎の生涯」を製作(演出:二代目松田春翠)
2001年~ サイレント映画関連の書籍監修(編集:無声映画鑑賞会/出版:アーバン・コネクションズ)
2007年    同社の所有する日本のサイレント映画のフィルムをDVD化した「Talking Silentsシリーズ」を関連会社デジタル・ミームよりリリース

★上映会情報★

第645回無声映画鑑賞会

日時 2012年4/26(木)18:30開演
場所 門仲天井ホール(江東区門前仲町1-20-3-8F/tel:03-3641-8275)
   東京メトロ「門前仲町」駅 3番出口から徒歩3分
   都営地下鉄大江戸線「門前仲町」駅 6番出口から徒歩1分

テーマ
ドイツ初期トーキー映画の日本的上映法

上映作品
18:30~ モンブランの嵐(1930年独 無声縮刷版)
     監督/アーノルド・ファンク
19:10~ 嘆きの天使(1930年独)
     監督/ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演弁士 澤登翠・松田貴久子
(21:00終了予定)

料金    当日1,800円(前売電話予約1,500円)
お問い合わせ・ご予約    無声映画鑑賞会 tel:03-3605-9981
*おトクな会員制度もあります。くわしくはお問い合わせください。
 

マツダ映画社

無声映画/上映会/弁士


住所
足立区 東和3-18-4

電話
03-3605-9981


*内容はすべて取材時のものです。ご利用の際はお店等でご確認ください。

  • LINEで送る