あれは約半年前… 339サイトオープンに向けて、北綾瀬を探索していたとき、偶然見つけた看板が「耳かき屋」。え？ 耳かき屋?? …なんだろう??
入ってみたいけれど勇気も出ず、うろうろしていた私に「どうぞ、入ってください」と気さくに声をかけてくださったのが、「耳かき屋 さんゆう亭」を経営されている小林様（三祐医科工業株式会社社長）でした。
はじめて入った「耳かき屋」さん。その名のとおりいろいろなサイズの耳かきが陳列されていました
医療機器を製造していた三祐医科工業株式会社さんが、その技術を活かして高性能の耳かきを製造し「さんゆう亭」さんで販売しているそうです。
339の店舗情報への掲載を快くご承知いただき、しかも「お土産にどうぞ」と商品の耳かきまで差し出されてしまった私… 申し訳なかったのですが、いただいてしまいました!!
せっかくいただいたので、そのうち1本を使ってみることに。
我が家では2本の耳かきを使っています。ひとつはゴム製、もうひとつはチタン製。両方ともスパイラル構造です。子どもたちは痛がりなのでゴム製のものを、大人はしっかりかきたいのでチタン製のものをおもに愛用していました。
そして登場したのが「さんゆう亭」さんの耳かき。
使ってみると… これがなんとも絶妙な「耳あたり」…
ゴムよりは硬いけど、チタンよりは優しい。とにかく絶妙の耳かきなのです。人によって好みはあると思いますが、なんとも優しいかき心地。
この不思議な素材はなに? と思って見てみると、先端部分が「ポリアセタール」、柄は「真鍮クロムメッキ」とあります。
…「ポリアセタール」ってなに？
聞いたことのない名前に俄然興味がわき、さんゆう亭さんに取材を申し込みました。
またもや快く取材を受け入れてくれたさんゆう亭さん。取材当日、開口一番に小林社長にたずねました。
―耳かきを使わせていただいたら、とっても優しいかき心地にびっくりしたんです。耳かきの素材について知りたいんですが…
小林社長 耳の穴に当たる黒い部分の素材は、「ポリアセタール」という素材です。聴診器の耳に当たるイヤーチップ部分などによく使われる素材です。
聴診器、なるほど耳あたりがいいわけですね。
―もともと耳に使いやすい素材なんですね。ちょっとさわってみたんですが、先端の部分を指で押すと、弾力性があってかすかに反りますね。かといって柔らかすぎない素材ですね。
小林社長 そうです。ポリアセタールには、程よい弾力性があるんです。それを1本ずつ削って作っています。
―えー。手作りなんですね。どおりで優しい掻き心地だと思いました。
小林社長 そもそも「ポリアセタール」は素材自体が冷たくないんです。なので肌に触れた時にも馴染みやすくて違和感がありません。医療用として使われているのもそのためなんです。
―なるほど。ポリアセタールは耳かきにピッタリの素材なんですね!
小林社長 そうですね。ポリアセタールには黒い色をつけて、耳垢が分かりやすいようにしました。細かい所までこだわっているんですよ。
さんゆう亭さんは、この場所（足立区六木）で、約40年間医療器具を製作されていらっしゃいます。その技術力を活かし、近年より、オリジナル商品「医療器具屋さんがつくった耳かき」を製造販売していらっしゃるそうです。
医療器具屋さんだからこそできた、耳かきにポリアセタールを使おうという発想。また丁寧な仕事は、精密な医療機器の研磨技術の賜物ですね!
小林社長にお話を伺ったあと、工場を見学させていただきました。
耳かきってこんなふうに作ってるんですね! みなさん真剣に取り組んでいる姿は、まさに職人さんって感じでステキです。若いスタッフさんもいらっしゃるんですね。
お店のなかを見渡していると、表彰状が飾ってあります。
―どういった経緯で表彰されたのですか？
小林社長 これは「足立ブランド」を受賞した時のものですね。
―足立ブランド？
小林社長 「足立ブランド」は足立区内の産業推進のために、足立区がはじめた事業なんです。
小林社長のお話によると、足立区内にはなんと3,000を超える町工場があるそうです。足立区がそのなかから優れた製品・技術をもつ企業を認定し、区内の産業のイメージアップと発展を図るという事業だそうです。いわば、足立区のものづくりの代表ですね。
小林社長から「足立ブランド」の冊子をいただきました。それによると、選ばれた34の企業（2012年3月現在）のなかに、さんゆう亭さんが入っていらっしゃるそうです。
さらに、「TASKものづくり大賞」（台東区（T）、荒川区（A）、足立区（A）、墨田区（S）、葛飾区（K）の5区共同の産業活性化プロジェクト）でも、平成21年度に奨励賞、平成22年度には大賞（単独開発部門）を受賞されています。
小林社長 「足立ブランド」を受賞したおかげで、足立区主催の展示会にも出店するようになりました。足立区の代表として選んでいただいたんですから、区内産業の広報活動にも力を入れていきたいですね。
「足立ブランド」の展示会の様子は、足立区長のホームページ「はい、区長です」にも掲載されています。（2011年9月22日）
http://www.city.adachi.tokyo.jp/hisho/ku/kucho/mainichi-20110922-02.html
今回ご紹介したさんゆう亭さんの「医療機具屋さんが作った耳かき」は、ホームページから購入することもできますので、ご興味のある方はぜひこちらから →http://sanyu-med.jp/
また、さんゆう亭さんは、千葉県成田市の耳かき専門店「耳かき亭」さんとも提携されているそうです。お近くの方はぜひのぞいてみてください。いろいろな耳かきがたくさんありますよ!
日頃あまり深く向き合わずにいた耳かき。今回取材してみて、たくさんの工夫が詰め込まれているのがよく分かりました。あらためて耳かきの奥深さと日本の技術力に感動しました。
お忙しいなか丁寧に対応して頂いた、小林社長をはじめさんゆう亭スタッフのみなさま方、本当にありがとうございました。
そして「耳かきより綿棒派」というみなさん、たまには耳かきもつかってみてください。いろんな耳かき、試してみたくなると思いますよー。
耳かき屋さんゆう亭
営業時間
8:00〜18:00
定休日
土日祝日
住 所
東京都 足立区 六木1-12-9［MAP］
電 話
03-3605-7842
URL
http://sanyu-med.jp/
＊内容はすべて取材時のものです。ご利用の際はお店等でご確認ください。
339（サンサク）編集部/取材・編集スタッフ
いくつになっても末っ子気質。究極の寒がりなため、冬は行動範囲が狭くなりがち。でも取材とならばどこへでも!! 何事もフィーリングで決める潔さが自慢。